ホホホのおばさんは、どこから来たのか?

http://mandanatsusin.cocolog-nifty.com/blog/2009/09/post-10c8.html
漫棚さんにて、「ここだけのふたり!!」(森下裕美作、竹書房刊)
に登場する脇役が取り上げられている。
私はこのおばさん、結構好きだ。
慢棚さんの引用に眼鏡のおばさんも出ていて、
二人とも(主人公夫妻の団地生活に比して)裕福なのだが、
眼鏡の方はやたらと張り合ったり、寂しがったり、
かなり俗っぽくて浅薄なのである。
しかし、ホホホのおばさんは常にわが道を行くである。
あるいみ主人公夫妻の「妻」と性格が共通している。


さて、この性格というのはどこにルーツがあるのだろうか。
少年アシベ」(同作、集英社刊)の
アッキーこと沢田くん、
彼は「カッパ天国」(同作、竹書房刊)所収の
初期短編にも「好きという訳ではないが一日一度は
考えてしまう男性」としても登場している彼こそが、
そのルーツなのではないだろうか。
作者はこういう不思議「くん」が好きなのである。


アッキーの性格というのは、よく言えば常識に囚われない、
自由人であり、好きな時に好きなことをするのである。
つまりは非常識なのだが、どこか憎めない性格なのだ。
ホホホのおばさんにしても、
眼鏡のおばさんを怒らせる行動を悪意や競争心から
行っているわけではなく(一部、競争的な描写はあるが)、
空気を読まずに言いたいことを言っているだけなのだ。
この純真無垢さというのが、
中期森下作品の通奏低音なのだ。


私は始め、「妻」のモデルは作者自身と思っていた。
しかし、作者の初期ラブストーリー物を読むと、
当人はどちらかというと世間というものが
分かっており、実際には眼鏡のおばさんに
近いのではないかと思えてくる。
そして作者のマンガの魅力である
純真無垢な変人たちの原型というのが、
この「沢田くん」なのではないだろうか。
上述の「一日一度は考えてしまう」下りの描写を見ると、
おそらく漫画業界の友人と思われる沢田くん。
もしかしたら「妻」をストーキングする、
松本くんというのは、
沢田くんを想い続ける作者自身なのではないかと言ったら、
考えすぎだろうか。