ユロ的生活

「僕の伯父さん」で有名なJacque Tati。
彼はフランスの名家の出身だが、キャバレーで形態模写などをして、
喜劇映画人となった人だ。
だからこの作品には「奇妙な仕事をして家の名を汚してくれるな」
などの家族との葛藤を描きつつも、
自由放埓でこだわりのない生き方が描かれている。
また同時に彼のテーマである、カーニバルも随所に隠されている。


まぁ言ってしまえばユロ氏はニート同然だ。
作中では義兄が社長を務める会社に入社させられるが、
基本的に責任ある生き方よりは気の赴くままに生きるスタイルだ。
決して楽しいことばかりではなく、
最後には義兄によって地方に左遷させられてしまうのだが、
それすらどこか面白く、辛いと思わない人生に
苦しみなど存在しないという一種の悟りすら感じられる。


僕は決して空想の人物に自らを重ね合わせて
現実から逃げたいわけではない。
むしろ現実をより幸福に生きるために、
Tati的感性を、ユロ的人生を真似て、
心の憂いを払いのけたいのだ。


最後に義兄が車で駅まで送ってくれる道中、
マッチの代わりにシガーソケットを渡される。
それでタバコに火をつけて窓からポイと投げ捨てる。
人生に捨てて困るものなどないのだ。
困ると思う前に、クスッと笑える何かを見つけられれば。