Ed Wood

邦題「エド・ウッド」1994年製作、監督ティム・バートン
主演ジョニー・デップ
この作品を中学生のころから今日まで5回ほど、
ケーブルテレビで観た。
はじめの2回は退屈だが、なぜか観てしまった。
次の2回は大分、引き込まれて面白いと思った。
そして、今日、私はティム・バートン作品の中で、
処女作「フランケン・ウィニー」に次いで、
ティム・バートンの心の奥底が美しく描かれている、
傑作だと思った。


筋としては、エド・ウッドという実在の
B級映画脚本・監督・主演・演出家が、
往年の名優、現在は忘れ去られてモルヒネ中毒の
ベラ・ルゴシと出会って、
売れないB級ホラー映画を撮るという、
実話の映画化である。


エド・ウッドには女装趣味があり、
最初の妻は最終的にそれを含んだ普通とは言えない生活が
嫌になって出て行ってしまう。
親友にして映画の目玉でもあるベラ・ルゴシも、
薬漬けとよる年波に勝てず他界する。
そんなルゴシの死ぬ前のちょっとした映像を元に、
遺作として「プラン9・フロム・アウタースペース」を撮り、
彼女に求婚して雨の中ハリウッドに行って終幕である。
実際にはその後、ルゴシのいない彼の映画は全く売れず、
アルコール依存症になって他界してしまう。


悲惨な後日譚を入れないにしても、
結構、悲惨な話である。
しかし悲惨さとは裏腹に、いや、悲惨さ故にか、
エド・ウッドは明るく精力的であり、
ルゴシと出会って目を輝かし、
二人で貧しくも楽しい映画創りの日々は、
楽しく美しい。
ルゴシはもはやぼろぼろの老人のはずであるが、
そこには往年のホラー名優、ドラキュラの名手としての、
誇りと誇りを裏付ける演技力がある。
本当に美しく、楽しさがふつふつと沁みる作品だ。


いわゆる面白いものではないし、
派手でもない。
やっと見つけたスポンサーが「最後に大爆発をいれろ」と
注文をつけるのは、ティム・バートンの自嘲のようでもある。
しかし観れば観るほどに味のでてくる作品なのである。