入院したまま・・・

私が入院する前、習い事の先生が、
「あまり、体調を気にしすぎないほうがいい」と
言ってくれたことがあった。
その時はなんだか意味が分からなかった。


入院してみると周りの患者は、
さりげなく深刻な人が多かった。
いずれも癌や癌の検査という団塊の世代
人たちであった。


安彦良和作「虹色のトロツキー 一巻」の解説文に、
山口昌男氏が
「湊谷が亡くなる半年前(中略)初対面が可能になる筈だったが、
「一寸体調を崩したのでこれから病院に行って来る」と湊谷は
検診に出かけたまま入院ということになり、
そのまま帰らぬ人となった。」と述べている。


また伊丹十三監督の「大病人」でも、
主治医が末期癌の患者に、
「俺があんたを入院させなけりゃ、
あんたは今もピンピンして映画を撮ってるんじゃないかって
気がしてきたよ。」ということを話すシーンがある。


私の場合、症状はひどいものの、それほど深刻でなく、
ごくごく気軽に入院して退院できたが、
実際、入院しなければよかったという人もいるだろう。
特に癌というのは、まだ治療して治るというものでもない。
癌体質であったり、転移がすすんでいると、
もうどうしようもなく、
入院生活が却って先の時間を短くすることもあるのだ。