F先生と父娘関係

藤子不二夫のF先生が大好きである。
一度だけご尊顔に配したのは、
小学生の時にドラえもんのミュージカル
(それ自体はミュージカスというほどつまらなかった)で
舞台に挨拶にいらっしゃった時のみである。
それからしばらくして亡くなられて、
告別式へ友人と2人で赴いたのが懐かしい。


Wikipediaによると
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%97%A4%E5%AD%90%E3%83%BBF%E3%83%BB%E4%B8%8D%E4%BA%8C%E9%9B%84
先生はドラえもんのアニメにおいて、
しずかちゃんだけには最後まで強いこだわりを持って、
注文もつけられたそうだ。
これはすなわち、絵として、源静香的キャラクターは
全て先生の娘さんの投影だからだと思うのだ。
これはのび太結婚前夜の描写などから考えても、
強く父娘関係が伺われるのである。


しかし、源静香よりも、私は寧ろエスパー魔美にこそ、
先生の強いこだわりが見えると考える。
Wikipediaにもあるが、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%83%91%E3%83%BC%E9%AD%94%E7%BE%8E
この作品の前身は短編「アン子、大いに怒る」である。
ここでは主人公アン子は父と二人きりの
父子家庭であり、そこにコンポコよりも犬らしい、
子犬が家族に加わるのである。


このアン子にしても、魔美にしても、
その家庭は実に心の豊かな、
程よく貧しい、幸福に満ちたものである。
恐らく先生は、そうした鳴かず飛ばずでも、
娘ないし恋人との精神の充足されて、
外部に煩わされない世界を欲していたのだろうと
推察される。
今更になって、F先生が偲ばれ、また大変惜しい気持ちが、
心の底からこみ上げてくる思いである。
図らずも先生の亡くなられた9月であり、
またそれはドラえもんの誕生月であり、
私が上述のミュージカルを見に行った月でもあるのだ。