個人情報

個人情報は口を開くと漏れる。
かと言って沈黙の修行でもあるまいし、
口を開かずに生きるわけにはいかない。


個人情報というのは、言うなれば、
私が生きていることそのものだ。
生命自体が情報の集積物であり、
またその活動も記録されれば情報だ。


元々は記録することが困難だったから、
石版に刻むとか、パピルスに記すという、
発明を続けてきた。
しかし現在は情報の記録が簡単すぎる。
そしてその伝達も、あまりに早すぎて、
「誰それにこのことを教えるのは適切かどうか」
といった思慮の結論が出るよりも先に、
その情報が伝わっていることがしばしばある。


それがかなり苦痛に思えてきた。
過剰に便利な世界よりも、
ほどほどに不便なほうが安心できるのではないか。