赤塚先生ご愁傷様です

バカ塚不二夫先生が亡くなって一番困ること。
先生の一番面白かったころの作品が、
作品集に入りにくくなること。


結局、作家が存命中は編集者もあくまで本人に、
掲載権を取らなくてはいけないので、
出版に際して本人が意見を出せる。
本人からしたら自分が骨身を削って出した珠玉のギャグと、
ある程度出た人気の余韻というか、
勢いで大したことなくとも採用されたギャグと、
心の中で区別がついているので
誠意がある限り、読者には珠玉の方を見せようとする。

しかし本人が隠れてしまうと
あとは権利が遺族なり、遺族の会社に移るわけだ。
遺族は当然、世間体がある。
編集者にこれとこれで行こうと思うと言われて、
その中に人間性をあまりにえげつなく抉り出した作品があると、
そういうものを伏せたいと思うのが、
まぁ当然といえば当然だ。
多分そういう経緯があって、
株式会社INFASパブリケーションの出した
「裏1000ページ」にはつまらない作品ばかりが載っている。
ほとんどの作品に
「でも赤塚には、暖かい人間性を描きたい気持ちがあったんです」
と言いたげな下心が見え透いている。
しかし赤塚ファンが見たいのは
偽善を笑い飛ばすサディズムだ。
天才バカボンも一番面白かった時期のものは、
ほとんどサディズムの爆発だ。
奇形や気狂いをちりばめる、
真剣な社会への挑戦だ。
奇形や気狂いという言葉自体も封じて、
無視という一番卑劣な差別をする社会への
怒りの爆発だ。


作家の皆さん。
死ぬ前に著作権は出版社など遺族の関係ない法人に
売り払いましょう。
遺族が著作権を引き継ぐと碌なことになりませんよ。