「変!!」中島らも

集英社文庫刊の標題作は触りからし
なんとなしに面白い。
ぎゅうぎゅう詰めの新幹線が新横浜で停まって、
「ワウワウワウワウ」と言いながら紙袋を三つ持って
乗り込んできた、ちょっと人外な人の話など、
妙にリアルで笑える。
それと話しながら帰路に就いた命知らずな筆者が素晴らしい。


僕は以前、営業の合間に神保町の喫茶店に入って、
そういう人外に遭った。
年のころは40半ば、小太りだが真人間「ぽい」男性だ。
どうも出版関係の人らしい。
「らしい」というのは、
つまりこの人はずっと「先生遅いなぁ」などと喋っているのだ。
始めは「余程せっぱつまっているのかな?」という程度にしか
思わなかったのだが、
どっこいずっと独り言で、ぶつぶつぶつぶつ、話し続けるのだ。
その「先生」というのもどうも妄想っぽい。


それを1時間くらい聞いて喫茶店を後にした僕も僕だ。
なんとなくそういう人に親しみを感じてしまって、
「話しかけたい」とすら思ったのには、
今更だが呆れてしまう。