人間の幸福について

あらゆる生命が尊いのは、それがいつも死と隣り合わせで、
それでもなお死ぬまでは懸命に生きようとするからだ。


第二次大戦後、人類の寿命は急激に伸びた。
生きているということが当たり前になった。
当たり前の生命は、どうも安いようで、
それを自ら放棄する人が増え続けている。


ある陶芸家は、
「人類は自然を恐れ、自然を克服した。
しかし核を発明したことで、
人類は人類を恐れて生きていかなくてはならなくなった。」
ということを言われた。


行き過ぎた科学技術文明が、
人類の生き物としての輝きを失わせたのではないか。
それでは今、人類は人類を克服しなくてはいけないのではないか。
それは一体、どうしたらいいのだろうか。
欲を捨てることだろうか、
争うことをやめることらだろうか、
いっそ、呆けてしまうことだろうか。


しかし、どんな苦しみに苛まれても、
ふと見上げた空が美しければ幸福を味わえる。
実はあらゆる所に幸福は存在しており、
それを見つけられるかどうかの問題でしかないのではないか。
だとすれば、ただあるがままに生きていけば、
それでいいのかもしれない。